根っこ堀り堀り
その1 そもそも「電気」って何だべか?
電子工作、楽しそうなんです。でも、基盤にくっついているパーツが何をする物なのかさっぱりさっぱり。それどころか「電気」という物についても実は曖昧だったりします。生物畑出身の私にとって、電気は「電線を流れて来る何か」くらいの認識…。でも、電子工作をする上では電気が何なのか押さえておかないと不安でなりません。
そこで根っこ堀り堀りその第1段は、そもそも電気というのが何であるのかを調べてみようと思いました。
@ 「電気」とは電荷がもたらす現象の総称
電気は英語でElectoricity。この語源はギリシア語で琥珀を表す「Electron」だそうで、琥珀を擦り合わせると静電気が発生する事から来ているそうです(Wikipedia:電気)。へぇ。Wikipediaの冒頭には「電気とは電荷の移動や相互作用によって発生する様々な物理現象の総称」とあります。どうやら電気を理解するには「電荷」を知る必要がありそうです。
電荷(Electric charge)は素粒子が持つ性質の一つ(Wikipedia:電荷)。素粒子は物質を構成する最小の粒みたいなもんですから、その素粒子が電荷を持っていると。で、電荷には「正電荷」と「負電荷」という2種類があって、正電荷と負電荷をもつ素粒子は互いに引き合います。これが「引力」。逆に同じ符号を持つ素粒子は反発し合います。これは「斥力(せきりょく)」と言います。電荷というのは素粒子が持っているそういう基本的な力の事で、その大きさが「電荷量」。なるほど…
例えば原子の周りをくるくる回っている(とモデル化されている)電子は負電荷、原子の構成物の一つである陽子は正電荷。原子の構成物にはもう一つ中性子というのがありますが、これは電荷を持ちません。なので、電子と陽子とはお互いに引き合っています。この引き合う強さは正電荷と負電荷を持つ素粒子の距離が近ければ強くなり(距離の2乗に比例)、その電荷量が大きければ強くなります。この引きあったり離れたりする性質を「クーロンの法則(Coulomb's law)」と言い、その力の大きさをクーロン力と言います:
素粒子一つ一つは上図のように正負の電荷を持っていて(中性な物以外)、そういう素粒子がごっちゃり固まっているのが「物」。この塊の正負の電荷量を全部足し合わせた時丁度ゼロだったらその物は「中性である」と言います。一方正電荷もしくは負電荷に偏っている時は「帯電している」と言います。下敷きを擦って起こる「静電気」は下敷きの電荷が片寄っちゃったから起こる現象というわけです。それの超凄いのが雷。なるほど…
電気のお話というのは、とどのつまり「電荷」のお話の事であって、電荷を持った素粒子がどう振る舞うのかというお話のようです。
A 電流は粒々の数っぽい
さて、電荷を持った粒である素粒子は、周りにある他の素粒子と干渉しながらあっちへふらふら、こっちへふらふらとクーロンの法則で動きまわります。静電気が軽い物をグイグイ引きつけるのを見ると、この電荷の動きというのは中々に力強い物である訳で、んじゃこの「動き回る量」はどのくらいなのかな〜っと測ってみたくなる訳です。この計り方として、素粒子が通る所に「ゲート」を設ける事にしました:
このゲートの中を電荷を持った素粒子が沢山通れば、それだけ良く動いている(力強そう)事になります。もちろん、このゲートは架空の物で、実際は「何らかの面積」であるわけですが、感覚的にも「面積が大きくなればより多くの素粒子が通りそう」とイメージ出来ますね。また、長い時間観測していればトータルでは沢山電荷を持った素粒子が通ります。同じ面積の所でどちらがより多く通るかを比較するには、測定時間を同じにしないといけないですよね。そこで、その測定時間を「1秒」と決める事にしました。
ある面積の所を電荷を持った素粒子が1秒間に通る数(電荷量)を「電流」と言います。記号は「A(アンペア:ampere)」です。これはアンドレ=アリ・アンペールさんの名前から取られたのだそうです(Wikipedia:アンペア)。もっと正確な定義はWikipediaにあるのですが、今の所は上のようなイメージで良いかなと思っています。
ただ、電子工作をする上でアンペアが具体的にどういう量なのかは知っておく必要がありそうです。例えば家のブレーカーには「40A」とかあるじゃないですか。あれがいったい何なのかという話です。要は「1Aって何さ?」です。これを知るにはどうやら「1クーロン」という基準が必要のようです。
1クーロンというのは先の電荷を持った素粒子の数(正確には電気素量)の単位で、その数は何と約6.24×1018!まぁ、粒祭りであります(笑)。で、1Aというのは、ある面積のゲート内を電荷を持った素粒子が1秒間に1クーロンだけ通過する電荷量となっています。家のブレーカーにある「40A」というのは、電荷持ち素粒子がケーブルのあらゆる所を1秒間に40クーロン分ガンガン通過している…という事なんだと思います。凄まじい数でくらくらです(^-^;
ただここで注意なのが、電流の大きさはゲートの大きさによっても変わるという点です。同じ動きをしている荷電素粒子の中に小さいゲートを設けたら、そこを1秒間で通る荷電粒子の絶対数は少なくなりますよね。つまり電流が小さい、低アンペアであると。逆にゲートが凄く大きかったら電流が大きい、高アンペアであると。となると、単純にアンペアの大きさを比較するだけだとゲートの大きさでズルができちゃいます。そこで、面積も一定に規格化すればその流れの強さが見えてきます。国際単位系という基準単位では、その面積を1m2としています。1m2の面積を1A分の荷電粒子(1クーロンね)が1秒間で(面に垂直に)通り抜ける量を「1電流密度」と言うそうです。
電流は何となくイメージできました。で、電気の話で電流と共に大抵一緒に出てくるのが「電圧」。これ、調べてみるとどうも電流よりもなんか捉え所が難しいのです(-_-;。
B 電圧を頑張って理解してみる
Wikipediaで電圧を調べてみると、「電気を流そうとする圧力の事である」とあります。ここでの電気は電荷を帯びた素粒子の事だと思うので、「電荷を帯びた素粒子を流そうとする圧力の事」と言っても良さそうです。
確かに電流のお話では素粒子はクーロン力によって流れるとしていました。クーロン力は素粒子同士が引きあったり反発したりする力ですから、もし正負の電荷を帯びた素粒子が入り乱れていたら、流れも何だかバラバラになりそうなイメージがあります。それって「流れていない」というのと殆ど変りません。素粒子が「流れる」には、少なくとも正電荷の素粒子と負電荷の素粒子とが偏って塊になっていないとうまく行かないだろうなぁと思う訳です:
ただ、上の図を作っていて「あれ〜、でもこれじゃ双方が真ん中に入り乱れるよなぁ…」なんて感じてしまいました。流れると言うよりも乱れるような…。と思ったら、どうやらそうはならないようなのです。ポイントは上の図の負電荷と正電荷粒子の「重さ」にあります。
ここまで素粒子素粒子と言ってきた上の粒ですが、原子のお話だとマイナスは「電子」そしてプラスは「陽子」です。この電子と陽子、一粒の重さが全く違います。陽子は電子の1836倍も重い!逆に言えば電子は陽子に比べれば鼻息で吹き飛ぶほど軽い粒子です。電子と陽子でお互い同じ電荷量を持っていたとしても、陽子は激重ですから殆ど動けません。一方の電子は相対的に激軽ですからすいすい動ける。結局、上のように同じような数あったとしても、マイナス電荷である電子がほぼ一方的に陽子側に引き寄せられる事になります。つまり上の図ではマイナス電荷の電子が右側にずばーっと流れる、となります。そう、陽子は太陽で電子は地球みたいなもんです。
もし上のマイナス粒子(電子)の塊とプラス粒子の塊がもっと密だったら、荷電粒子たる電子が流れる総量(電流)は半端ねー!っとなりそうです。そう、このより沢山の荷電粒子(ほぼ電子だと思うけど)を流そうとする力こそ「電圧(Voltage)」です。たぶん色々嘘があるとは思うけど、きっとこういう解釈でそんなに間違っていないはず。
電圧の単位は「V(ボルト:volt)」です。この名前はボルタ電池という電池を発明したアレッサンドロ・ボルタさんの名前を取って付けられました。では、「1Vって何だべ?」となるわけですが、これが…単純ではなさそうです。
Wikipediaに載っている1Vの定義をそのまま拝借すると、
・1アンペアの電流が流れる導体の2点間において消費される電力が1ワットであるときの、その2点間の電圧 (V=W/A)
・導体の二点間を1クーロンの電荷を運ぶのに1ジュールの仕事が必要となるときの、その2点間の電圧 (V=J/C)
・1オームの電気抵抗のある導体の2点間に1アンペアの電流が流れているときの、その2点間の電圧 (V=AΩ)
このどれも1Vの定義だそうです。んー、これは今の段階だとあまり深く考えない方が良いかもしれません(^-^;。ただ、一番下にある「電気抵抗」と電圧や電流の関係は電子工作をする上で外せない内容なので、次に考えてみます。
C 電気抵抗と電流と電圧
先の一番下の定義を見ると、「1オーム(Ω)の電気抵抗のある導体(電気を通す物)の2点間に1Aの電流が流れている時、その2点間の電圧は1V」と言っています。これは電気抵抗と電流と電圧の関係を述べていて、
という単純な式が成り立つ事を表しています。この式、そうかの有名な「オームの法則(Ohm's law)」です。中学校の時に習いましたね。
例えば、乾電池は普通1.5Vです。電子と陽子がそれだけ偏っている状態だという事ですね。今電池の両端に何か電気抵抗のある導線(豆電球とか)を繋げたとしましょう。今仮にそれを20Ωだとすると、上の式からその回路には1/20=0.05Aの電流が流れる事になります。電気抵抗が大きければ大きい程、そこに流れる電流の量(電子の総量)は少なくなる、つまり電子の流れが穏やかになります。
では逆に乾電池に殆ど電気抵抗の無い導線、例えば銅線を直に両端に繋げるとどうなるか?電気抵抗値がほぼゼロですから、相対的に流れる電流はそれこそ何千アンペアというレベルで大きくなります。それだけ物凄い勢いで電子が流れると言う事は、すごいパワーが発生してしまうという事です。そのパワーはどこにぶつかるかというと、銅線の中の抵抗者と乾電池の中のプラスな素粒子(陽子かな)です。これは大変に危険で、銅線が焼き切れるか、乾電池が耐えきれずに爆発してしまうそうです。こういう抵抗の小さい所に電流が一気に流れて回路が破壊されてしまう事を「短絡(ショート)」といいます。電子工作をする上で短絡は絶対に避けなければならないわけで、上のオームの法則が大切なわけです。
D まとめ
電気のお話はつまる所電荷のお話でした。電荷は素粒子に備わっている性質で、正電荷と負電荷があって、符号が違うと引力で、同じ符号だと斥力が働く。この引っ張ったり離れたりするのがクーロン力。そのクーロン力で動く電子(負電荷)と陽子(正電荷)。でも陽子は凄く重くて電子は凄く軽いので、殆ど電子が引っ張られる。
とある面積内を1秒間に通る電子の数が電流(アンペア)。それを単位面積にすると電流密度になる。一方電子と陽子の偏りによって電子が陽子側に引っ張られる力の大きさが電圧(たぶん)。電圧、電流、抵抗の間にはV=ΩAという関係がある。抵抗が無い所に電圧を掛けると凄まじい電流が流れて短絡を起こすので注意しよう。ん、この章はこんな感じになりました。
電子工作をする上で電圧、電流、抵抗は必ず出てくるわけでして、正しくは無いかもしれないけどそのイメージが頭にあれば、きっと工作の助けになるはず。次章から楽しみです(^-^)